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「雲雀さん!どうにかして…浩太くんのお母さんを助けてあげられないですか!?」
奈津の必死な訴えに対し、雲雀はため息をつきながら言う。
「…とりあえず離せ」
奈津は雲雀の目を見た。
そしてそっと掴んでた腕を離したのだった。
すると雲雀は足を掴む浩太の頭をポンッポンッと叩く。
「いいかガキ。最初に言ったはずだ。必ず助けてやると…」
すると浩太もまたそっと掴んでいた足をそっと離した。
「いい子だ。ここは危ないからこのお姉さんと向こうに行っててくれるか?」
浩太は奈津の方を見た。
雲雀は浩太にそう言うと静かに奈津に耳打ちする。
「いいか、今この母親はとても危険だ。下手すりゃお前らまで害が及ぶ。俺もお前らと一緒で何とか助けてやりたいが、今は話せる状態じゃない…」
雲雀は耳打ちをしながら女性を見た。
相変わらず興奮気味にこっちを見ている。
「ここは俺に任せてこの空間から出ろ」
「雲雀さん…」
「大丈夫だ。何とかしてやる。いいから行け」
奈津は覚悟を決めた顔をして、浩太の手を取った。
「行こ!浩太くん!」
あの時掴めなかった小さな手。
今はその手をしっかりと握る。
そして雲雀に背を向け、走り出した。
徐々に雲雀の背中が小さくなる。
「…」
浩太は時折後ろを振り返り、雲雀と自分の母親の方を心配そうに見る。
「大丈夫。雲雀さんがきっとママを助けてくれる!」
浩太は奈津に手を引かれ、ただただ遠ざかる二人の姿を見ていた。
やがて奈津と浩太の存在感が空間から消える。
「さてと…。アイツらと約束してしまったし…」
雲雀は頭を掻きながら言った。
「とりあえず大人しく成仏してもらおうか…。おかあさま」
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