雲雀心霊探偵事務所

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暑い夏の日だった。 人で賑わう通りを奈津は一人でとぼとぼと歩いていた。 嫌な事があった。 今はとりあえずそういうことにしておこう。 そんな時、奈津は生まれては初めてナンパと言うものに逢ったのだった。 「ねぇ彼女!今暇?ちょっと時間大丈夫?」 そう言って奈津に優しい声をかけてきたこの男性。 髪は黒のミディアムで癖っ毛なのかわからないが緩くパーマがかかっている。 目は少し垂れ目でどこか安心感を抱かせる優しい目をしていて、にっこりと笑ったその顔は何人もの女性を落としてきたであろう甘いマスクを付けていた。 あと印象的なのは右耳に光る金色のピアス。 それに訳のわからない柄が書かれたTシャツに革のベルトと洒落たバックルが目立つジーンズ。というとてもラフな格好で、派手なネックレスがアクセントとして際だっていた。 一言で表すとチャラ男風なイケメンだ。 「いえ・・・急いでいますので・・・」 (こんなイケメンが私に話しかけてくれるはずが無い。これはきっと罠だ!何の目的かわからないけど、何かの罠だ!それに私は今とてもそんな気分じゃない!) 奈津は必死に自分に言い聞かせた。 徹底的に無視をして、立ち去ろうとした時だった。 彼があの言葉を言ったのは・・・。 「君、視えるよね・・・?」
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