恋占いはおみくじで

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 その奇妙な店は、私の家のお隣さん。「おみくじや」っていう、色んなおみくじが引ける変なお店。住宅街に、一軒だけお店があるのも違和感を増してる。  元々は街角の駄菓子屋さんだった。店をやってたお婆ちゃんがお歳をめされたので、孫の高志君が引き継いだのだ。で、気づけば高志君が「おみくじや」なんていう奇妙な店に改装しちゃっていた。  小さい頃は、お隣の駄菓子屋さんでよく遊んだな。お婆ちゃんも優しかったけど、時々お店番をする高志君が「ナイショだよ」と言って、お菓子をオマケしてくれるのが嬉しかったっけ。  あの駄菓子屋が改装されると聞いた時は寂しかった。でも、おみくじやにも狭いながら駄菓子屋コーナーがあるのを見て、なんだか安心した。高志君は「神社の縁日のイメージなんだ」と言っていた。けど多分それは後付けの理由で、お婆ちゃんのお店を少しでも残しておきたかったんだと思うな。  高志君とは6つ離れているから、駄菓子屋で遊んでた頃は随分お兄さんに見えた。けど、今は同い年くらいに思えてしまう。大学を卒業した後、1人でお店をやっているのは立派だけど、発想がナナメ上過ぎて大人に思えないんだよね。だから呼び方も、高志「さん」じゃなくて高志「君」になってしまう。こっちはまだ高校生なのにね。  高志君いわく、「国際経済学科を出て、日本のグローバル化について考えてたら、おみくじに行き着いた」んだって。最先端の科学技術が身の回りに溢れてるのに、日本ほど占いや神頼みが身近にある国は他に無いみたい。朝のニュース番組に必ず「今日の運勢」コーナーがあったりとか、勝負事の前にお祈りに行ったり、年齢の節目でお祓いに行ったりとか。  そんな日本だから、おみくじの需要はもっとあるはず! と高志君はいつも楽しそうに話している。あと、おみくじの良さを世界に発信するんだ! とも。  おみくじやでは、オリジナルおみくじの作製と販売もしているのだけど、高志君が作った英語版おみくじは、海外から注文が多いらしい。
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