6章 暴君主

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・ 「なんで寄りによってアーキルなのっ!?」 セナがハラハラしながらその状況を見つめていた。 確かにそうだと思う。 しかも体格差がありすぎるし…… 愛美も心配そうにその光景を見守る。 「アーキルやっぱりザイード様を怒らせてるのよ何かでっ…じゃなきゃあり得ないはこんな展開っ」 セナは疑り深くそのことを繰り返す。 アーキルは涙目になって訴え続けていた。 「そんなぁっ…」 必死の抵抗も虚しく小柄なアーキルはザイードの目の前に立たされた。 「勝てば褒美をくれてやる──」 「勝てないですよぉ…っ」 「男が勝負する前から諦めるなっ」 「そんなこと言われてもっ…」 アーキルはただの使用人でラクダの世話係だ── べつに稽古など付ける必要もない。そんなアーキルに面白がって賭け金を預ける者達も出てきていた。 「アーキルっ!褒美だってよっ童貞捨てるチャンスだぜっ──…」 そんなヤジにアーキルは真っ赤になった。 「ほう、お前はまだ童貞か……」 ザイードは赤い顔のアーキルをニヤニヤと眺める。 「いいだろう、お前の好みの女を世話してやる」 そう言ったザイードの言葉のあとに観戦者達からは冷やかしの野次が跳んでいた。
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