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こうなったら仕方ない。
勝てるとは思っていなくてもやるしかない……
ちょろっと向かっていって投げられればすぐ終わりになる。
アーキルが考えていると
「手抜きをしようなんて思うなよ? ガッツリ本気でかかってこいっ……そのくらいの気持ちが見えなきゃ俺に対して失礼だと思え──」
即座に読まれた胸の内。アーキルは諦めるしかなかった。
審判の合図で二人の取っ組み合いが始まる。
「白線から出たら負けだ!それ以外なら何べん転がされても負けにはしてやらん」
ザイードの言葉にアーキルは目を見開いた。
どう足掻いても簡単に負けさせてはくれそうもない。
覚悟を決めて、アーキルはザイードと取っ組み合う。
身長差があるせいか、アーキルはザイードの胸に飛び込みしがみつくような構えになっていた。
まるで子供と大人の闘いだ。
案の定、アーキルの身体は軽くザイードに転がされる。そしてザイードは白線からアーキルが出ないようにアーキルを容易く投げ飛ばす。
格闘技というよりは払い投げの稽古だ。
数回投げ飛ばされたアーキルは、何時しかガッツリザイードの腰にしがみつくようになっていた。
「お、中々腰に力が入ってきたじゃないか」
ザイードは本気で取り掛かってきたアーキルに楽しそうに応じる。
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