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赤と青の少年
20XX年 世界連合国日本支部東京都
「オイ、レイラ。学校遅れるぞ」
家の外で自分を呼ぶ声でレイラ――葉月レイラはあわてて学校に行く用意をし、玄関の扉を開けた。
そこには声の主である隣のマンションに住むクラスメイトの神上アキが立っていた。
「おはようアキ。悪いな、待ったか?」
「少しな。まあ大丈夫だろ」
レイラとアキは、学校へ向かって歩き出した。アキは入学したときからの親友だ。入学式の日、アキのほうから話しかけられたことからきっかけで今に至っている。お互いに部活動には入っていないが、よくいろんなところへと遊びに出かけている。
今は九月中頃、この二人が通っているのは日本支部がまだ日本国として存在していた頃、10年ほど前に設立した葉月学園という中・高・大まである国立(現日本支部立)一貫校だ。各地から集められたエリート達が政界など、将来日本を引っ張って行く人材を育てあげる学校で、全員難題のテストを受けこの学校に中等部から入学している。現在二人は高等部の2年Gクラスに在籍していて、1学年5クラスのなかで最も優秀なクラスだ。
アキは筆記テストを受けて入学したが、レイラは特別に筆記テスト免除だった。理由は簡単だ。皮肉なことに入学試験の直前の2月、レイラは交通事故に遭い病院に入院していた。 そのせいでレイラは試験を受けられず、特別に書類審査のみで筆記テストは免除された。免除された最大の理由が、交通事故が原因でレイラは事故に遭う以前の記憶― 一般常識や社会的な出来事は覚えていたが、自分自身を含め、自分に関わっていたであろう人物や出来事を覚えていなかった。一応小学校の頃の成績によれば葉月学園でも十分やっていける成績だったらしいので、そのまま書類審査のみで入学が決定された。
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