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5年前、目を覚ましてから聞いた自分自身のことは―自分の名前は葉月レイラ。両親と兄がいたが3人は交通事故で他界。親類はなし。学業は優秀―紙切れ一枚あれば知ることができる事実だけだった。自分の交友関係とか、どのような性格だったのかは周囲に誰も知っている人はいなかった。
記憶を失ったせいか、今までどのように生きてきたのかも、自分がどのような人物だったのかも分からなくなっていた。目を覚ましてから入学するまでの2ヶ月間はカウンセリングと社会復帰のためのトレーニングばかり行い、一応現在の『葉月レイラ』が形成された。
学園の方も、特例措置として学費免除と住居の提供、さらに生活費まで援助してくれると言ってくれた。もともと葉月学園にあった措置らしいのだが、レイラはありがたくその恩恵に授かっている。
記憶はまだ何も思い出せない。それは不安だが今はそれでも良いと思っていた。家族を失って天涯孤独となったが、悲しみのどん底に落ちるような気持ちにならずにすんでいる。もし覚えていたら、家族が死んでしまって今でも悲しんでいたかもしれない。唯一の救いは、記憶は失っても、学力は落ちなかったということか。
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