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「お客さんが買っていくのに、駄目なものが残っちゃうの?」
「お客さんは良いものと駄目ものが見分けられる。良いものを選んでいくから、どうしても駄目なものが残っちまうんだよ」
「誰にも食べてもらえないなんて可哀想だよ……」
「かりんちゃんだって食べなかったんじゃないかい?」
「え?」
「ピーマンを残して、家を出てきちゃったんだろう?」
「あ……」
かりんはお皿の上にポツンと残されたピーマンを思い出しました。
「お客さんが良いものを買っていくのは家族に美味しいものを食べさせてあげたいって思ってるからなんだよ。きっとかりんちゃんのお母さんも、かりんちゃんに美味しいものを食べてもらいたいと思ってピーマンを買ってきたんだよ」
「……かりんのため?」
「そのピーマンはたくさんある中でお母さんに選ばれたものだ。なのに、食べてあげないのは可哀想じゃないかい?」
「うん……。お母さんに酷いこと言っちゃった」
「謝れば許してくれるさ」
「うん。かりん、帰るね」
「ああ、気をつけて帰るんだよ。あ、これお手伝いしてくれたお礼にあげよう」
おじさんは袋にたくさんのお野菜や果物を入れて、かりんに持たせてくれました。ピーマンも入っていましたが、かりんは落とさないように袋をぎゅっと握りしめます。
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