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お社の中には、木蓮の力によって構成された、普通の人間には決して入ることのできない空間が広がっている。その空間こそが、木蓮のお屋敷だ。
茅萱は、中に入ることを許された唯一の人間であり、どこに柊の部屋があるのかも知っていた。
「俺、様子を見てきます」
「あ、茅萱、待て……っ」
大したことはないと言われても、やはり気にはなる。そもそもここへは柊の顔を見に来たのだ。会わずに帰りたくはなかった。
遠退く茅萱の後ろ姿に、木蓮はふう、と息を吐く。
「相変わらず、柊のこととなると急に幼くなるな……」
茅萱のことは、自分よりも背の低かった頃から知っている。
ある日先祖返りとして連れてこられた少年は、とても大人びた顔をしていた。
実の両親と引き離され、後を継ぐことを半強制的に決められ──
無理やり大人にさせられた少年は、どの表情もあまりに「整い過ぎて」いた。
柊といるときの茅萱は、どこにでもいる十三歳の少年に見える。そのことが、木蓮にとっては微笑ましかった。
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