2064人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
………………………………
指先に意識を集中すると、小さな雷がパチパチと弾ける。夕暮れの薄暗闇の中で、その光はまるで線香花火のように見えた。
光を蓄えた手を、お社の入口にかざす。普通に開けては、木蓮の屋敷に入ることができない。中に入るには、あやかしとしての力を示す必要があった。
屋敷への道が通じたことを感じ取ってから、茅萱は目の前の戸を横に引いた。
柊の部屋は、入口から見て対角線の位置にある。
茅萱は左手の廊下を進み、逆からL字を描くようにぐるりと回り込んでいく。角を曲がったところで、ふわりと水の香りが漂い始めた。
白い花のような、雨上がりの空気のような、瑞々しい清楚な香り。柊の、香りだった。
最初のコメントを投稿しよう!