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あやかしは、相手のことを外見ではなく香りで識別することが多い。先祖返りである茅萱にも、そういうところがあった。
柊の香りは、初対面のときに記憶した。彼が近くにいれば、目を閉じていても解る。
廊下の向こうからふわりと漂ってくる香りは、間違いなく柊の香りだったが。その慣れた香りの中に違和感を感じ、茅萱は首を傾げた。
──柊の香りにしては、甘さが強いような……?
彼の命から発せられる香りは、もっとすっきりとしていたように思う。
香りのカテゴリーは同じなのだが、甘さの度合いが違っていた。
次々と蜜が滴り落ちていくような、とろりとした甘い香りは、今までに嗅いだことのないものだった。
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