初めての相手

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翌日茅萱は、学校から帰宅しても神社へは向かわず、離れで夕食までの時を過ごしていた。 力が落ちているという、柊のことは気になったが。柊や左京を前にしたとき、どんな顔をすればいいのか分からなかった。 もやもやした気持ちを抱えながら、ベッドに突っ伏していると、出入口の扉の辺りで何かがきらりと光った。 どうやらその光は、扉をすり抜けようとしているらしい。完全に扉を通り抜けたとき、ようやくそれが兎だということが分かった。 随分と小さな兎は、ぴょんぴょんと跳ね、茅萱のいるベッドの上までやってきた。 『──茅萱、後で我の屋敷まで来い』 兎が、木蓮の声で語り始める。木蓮が伝言を届ける際によく使うやり方だった。それはあくまで伝言のための手段であり、こちら側からは、再生しかできない。 『柊のことで、話がある』 「え……」 付け足された言葉に、茅萱は思わず声を上げた。
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