初めての相手

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……………………………… 母屋で夕食を取ると、茅萱はちょっと走りに行ってくると両親に告げて家を出た。 陸上部に入ってから、夜走りに行くのはよくあることだったので、特に疑われるようなことはなかった。 徒歩十分くらいの距離は、走ってしまえばあっという間だ。長い石段を駆け上がり、夜に包まれた神社にたどり着くと、賽銭箱の前の石段に、狐の姿をした木蓮がいた。 「──早かったな」 木蓮はぴょんっと宙に跳ね、人の姿に変化した。 「屋敷では、柊がいるからな。場所を変えよう」 木蓮について、神社の裏手へと進んでいくと、急に見知らぬ道に出た。途中からあやかしの道に入ったらしい。木蓮が何も言わないので、茅萱も黙ってついていく。 木々の中をしばらく進むと、開けた場所に出た。見渡す限り、青々とした草原が広がっている。夜だというのに、黄色い日射しが眩しかった。 「まあ、座れ」 木蓮が草の中に気持ちよさそうに腰を下ろしたので、茅萱もそれに倣った。手をついたときに触れた草は、思ったよりやわらかくて冷たかった。
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