一線

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ばさばさと鳥の羽ばたく音がした。それに伴い、周囲から生き物の気配が消える。普段ならあちらこちらにいる小さなあやかしたちも、今は身を潜めている。 左京から発せられている、静かな怒りを敏感に感じ取ったためだろう。茅萱も、できることなら今すぐこの場を離れたかった。 神社の境内の一角にて、あのね、と左京は言った。 「あやかしごとに力の総量が異なることは、君も知っているでしょう。柊のそれが少ないのは、受け皿が小さいからだよ。既にいっぱいになっているところに、さらに注ぎ足したら、溢れるに決まっているでしょう」 ごめんなさい、と茅萱は謝る。 普段通りの涼しい顔をしているところが、余計に怖ろしい。 「君がしたのは、満腹状態のひとに、甘味を追加して無理やり食べさせたようなものだからね? それは、お腹を壊しもするよ」 「う……」 茅萱がしなしなと萎れていくのを見て、左京はようやく声のトーンを和らげた。 「茅萱の力は、自分で思ってるより強いんだから。相手の様子を見て、加減してあげないと。ね?」
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