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茅萱が柊と出会ったのは、雪の季節のことだった。
淡い雪の華が、はらはらと舞う中。白く染まった神聖な場所に佇む、着物姿の少年。
それが人ではないということは、あやかしを見慣れている茅萱にはすぐに解った。
雪と同化しそうな、白銀の髪。乳白色の肌。振り向いた小振りの顔には、澄んだ泉のように青い瞳がきらめいていた。
「こんにちは」
茅萱が話しかけると、彼はきょとんと瞳をまるくした。
「私が、見えるの」
「うん。俺、あやかしの血を引いてるから」
当時十二歳。茅萱は既に、自分が普通の人間ではないことを知っていた。
「俺は、支倉茅萱。君は」
「……柊」
「ひいらぎ、か。柊は、ここで何してるの?」
そこは茅萱の父が管理する、神社の敷地内。
害のない、小動物のようなあやかしが訪れることは多いが、こんなふうに人の形をしたあやかしが姿を見せることは稀だった。
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