愛すべき熱

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「だめ……」 その頼りない訴えの直後、柊はまた身体を震わせて吐精した。出させるつもりはなかったのだが、想像以上に中への刺激というのは強いものだったらしい。柊は呼吸を整えてから、濡れた瞳で茅萱を睨んだ。 「だめ、って言ったのに……」 「ごめん。かわいかったから」 「理由になってない……っ」 「そうかな」 茅萱にとっては十分すぎるくらいの動機付けだった。 「ていうか、柊……」 そのとき不意に、柊の香りが変化していることに気が付いた。元々彼がもつ命の灯の香りを、さらに濃く煮詰めたような。甘く濃密な、花の香り。 「何か、いい匂いがする」 この香りには、覚えがある。あれは確か──柊が左京に口付けられているのを目にした夜のことだ。 「……力を立て続けに放出したからだろう。一度に多くの力を失ったときには、そのような変化が起きやすいと木蓮から聞いている」 どうやら、花が虫を求めて甘い香りを発するのと同じことらしい。
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