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七色との密会を終えて自室に戻った恵流は入り口に揃えておいてあるブラウンのローファーで先客を感知した。
「おかえりなさい。今日はまた一段と遅かったわね? お兄ちゃんが帰ってくる時を今か今かと待ちわびる愛妹の気持ちが貴方に解る?」
学園では高グレードに位置する一人部屋に備え付けられた勉強机。その付属のキャスター付きの椅子を定位置としている神出鬼没の彼女は、鳴海紗織――名字は異なるが、恵流の妹だ。
そう"知らされている"少女が帰参した恵流を憮然と迎えた。
「だったら事前に連絡の一つも寄越してから来るようにすればいいのに」
沙織は椅子の背もたれに顎を乗せて艶やかな黒髪を掻き上げて恵流をじっと見つめる。その表情は、恵流の深奥を見透かすように透徹していた。
ブレザーをハンガーにかけた恵流は溜息を吐いてベッドに腰かける。
「まぁ、僕にとっても都合が良いや。君に渡したいものがあったんだ」
「まぁ、待ちかねた私にプレゼントかしら? 不束の貴方にしては大分気が利いているわね」
「プレゼント、というより返済だね」
恵流が紗織にも見えるように可視化の画面≪ディスプレイ≫を展開する。二つの幻装≪デバイス≫が並べられていた。
「見た所、特級素材≪ハイクオリティリソース≫みたいだけれど。借金と言われても、私には心当たりがないわね」
祝福の剣と聖女の涙。それは第一設定世界の特殊シナリオを攻略する過程で恵流が入手した貴重な品だ。
特級素材≪ハイクオリティリソース≫は特注の幻装≪デバイス≫――特注品≪オーダーメイド≫を作る為に必要不可欠な材料で、破格の値で取引される。
「これで幻装連立稼働機構を入手する際に不足していた分の代金を賄って欲しいんだ」
幻装連立稼働機構とは、要約すると装備効果≪デバイスエフェクト≫の二刀流を無理やり重複発動して複数の武器装備スロット生み出す幻装≪デバイス≫だ。
恵流は紗織を伝ってこれを入手。その際に、紗織は恵流が支払った以上の費用を掛けていた。
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