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変わりたい。変わらなければいけない。菖蒲の胸の内で不完全燃焼を続けてきた強い欲求は、大嫌いな自分を少しでも好きになりたいから――ではなく、愛すべき隣人達に損をさせたくないが為にある。
「のえるが俺を必要としてくれているなら、協力はする。でも」
優しい人が犠牲になる構図は許せない。好きな人には報われて欲しい。笑っていて欲しい。
不純物は内側にいなくても構わない。その光景を遠目からでも眺めていられさえすれば、幸せだ。
助けてもらってばかりで説得力はないと思うけれど――。
「自分の事は自分で何とかするから、俺には手を差し伸べないで欲しい」
一人で立つこともままならない菖蒲に、誰かを守る事など出来やしない。自分の身の周りの事に注力した方が賢明だ。
幸い、菖蒲の”周囲の人間”は強い。菖蒲にかかずらっていなければきっともっと上手く立ち回れる。
恵流は「なるほどね」と、恐らく菖蒲の意図を十全に汲んだ。
「やだよ」
その上で、清々しい程に爽やかに短く一言で一蹴した。
「ああ、うん。お前はそういう人間だよな……断られた事より、あんまり驚いてない自分に驚いてる」
「そして一人で悩んで追い詰められて、どうせ空回りするのが菖蒲という人間だよ。その事後処理の方が反って面倒くさいんだよね」
「どうせって、酷評だなぁ。間違ってないけど。間違ってないけどっ」
「結局こうして介護する事になるなら、最初から関わって未然に事故を防いだ方が手っ取り早いよ」
「さ、最初から最後まで関わらないって選択肢っ」
菖蒲の反論は苦し紛れだった。それもそうだ。何故なら、恵流の主張の根幹を完全に無視している。
「意固地だなぁ。君がそのつもりなら僕にも考えがあるよ」
言葉など所詮は飾りだ。現に菖蒲の主張も恵流の主張も、交わりはしない。恵流はいつでも行動によって己の我を通してきた。
「取引も却下された事だし、ちょうどいいや」
恵流は菖蒲に肉薄して、隙だらけのその腕を取る。
「僕には君が必要だって言ったよね」
面食らって未だ理解の及んでいない菖蒲の腕を引いて、強引に外に連れ出す。
「君が嫌だと言っても僕には少しも関係ないんだよ。君に構うなとお願いされても、僕は好き勝手にやりたいようにやるんだ」
言葉など所詮は飾りだ。立派に使いこなしてこそ、飾りは飾りたり得て、豪奢に、大袈裟に、時には華美に行動を彩る。

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