その奇妙な店は…

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 気づけば私は河原に立っていた。辺りには薄暗い霧が立ち込め、足元には丸い砂利がいくつも転がっている。 「え? ここはどこだ? 私はさっきまで冥途喫茶にいたはず……」  先ほどのメイドの言葉が思い起こされる。  ”このオリジナルブレンドコーヒーを飲めば、誰でも冥途に行くことができ、臨死体験ができるのです” 「……ひょっとして、ここが冥途か?」  私が考え込んでいると、何者かに後ろから服を引っ張られた。 「おじさん、駄目だよ」  振り向くと、悲しげな瞳で見つめる小さな男の子の姿。 「石を積むのをやめては駄目だ。鬼がやってくるよ」 「鬼……?」  霧の中、目を凝らすと、そこにはたくさんの子供たちがいた。  そしてその子供たちは、皆一心不乱に石を積んでいる。  私は合点がいった。そうか、ここは賽の河原なのか。  賽の河原といえば、親よりも先に死んだ親不孝な子供が死後に行く、三途の川のほとりの河原のことだ。そこで子供たちは、延々と石を積む作業をしなくてはならない。  しかし、石がある程度まで積みあがると、鬼がやってきてそれを壊してしまう。そして子供たちは延々終わりのない石積みをしなくてはならない。まさに無限地獄。   私がそこまで考えた時、ドシーン、ドシーンという地響きに似た音が近づいてきた。 「鬼だ!」 「鬼が来た!」  子供たちのざわめきに恐怖の色が混じる。霧が晴れ、その異形の者が姿を現す。  黒くごつごつした皮膚。鋭い牙。頭から生えた角。手に持ったこん棒で、次々と子供たちの積み上げた石を壊していく。 「ああっ!」 「やっとここまで積み上げたのに!」  すると、鬼はこちらを振り返った。  私はびくりと身を震わせたが、鬼が見ていたのは私ではなく、私の後ろにいた5歳くらいの子供であった。子供は泣きだした。 「やだーっ! もうこれ以上壊さないで!」  子供が積み上げた石に覆いかぶさる。  しかし、鬼はそんなことなどお構いなしに、棍棒を振り上げる。私は走った。 「危ない!」  子供を庇おうと走る、その頭上で振り下ろされる棍棒。私の頭に向かって一直線に振り下ろされたそれが、まるでスローモーションのように見えた。  すると頭の奥で若い女性がこう語りかけた。 「おかえりなさいませ、ご主人様」
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