その奇妙な店は…

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「――っ!?」  私は目を覚ました。目の前に広がるコーヒーの香り。  薄暗い店内に静かにメイドの声が響いた。 「おかえりなさいませ、ご主人様」  気が付くと私は冥途から帰還し、元の喫茶店に戻っていた。  死人の様な肌をした、不愛想なメイドが私の瞳を心配そうにのぞき込む。 「――ただいま」  私は振り絞るようにして返事をした。メイドの口元に微かに笑みが浮かぶ。 「こちらは『冥途の土産』です。もしよろしければお持ちください」  渡されたのは、「冥途喫茶」のパンフレットと小さな包みだった。  私はぼんやりとした気分のまま会計をし、店を出た。  あれは夢か空想か――いや。私は頭を振った。驚くべきことだが、ここは本当に冥途喫茶だった。    そして冥途に行った私はそれ以来、めきめきと仕事の成績を伸ばした。  石を積み続ける苦行に比べたら、終わりのある仕事なんて楽なものと思えるようになったのだ。  これはいい、そう思った私はそれから何度も冥途喫茶に足をはこんだ。 「ねぇ、このコーヒー、どこのなの?」  そんなある日、妻がコーヒーを飲みながら私に尋ねた。  妻が飲んでいたのは、「冥途の土産」のドリップコーヒーだ。このコーヒーは、冥途に行く作用こそないものの、香りが強くてなかなか美味しい。  私は思い切って、妻に冥途喫茶のことを話してみた。 「ふーん? なにそれ、本当の話? ぼったくりじゃないの?」  妻は初めのうちは半信半疑だったが私が熱心に説明するのを聞いて、少し興味を持ったようだ。 「もしそれが本当なら、少し興味があるかも……」  そういえば、妻はこの前テレビでやっていた、恐山のイタコの特集にひどく興味をひかれていた。もともとこういうことに興味があったのかもしれない。 
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