最終夜

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「亜古は、嫌?」 康の問いかけに思いっきり首を横に振った。 嫌じゃない、嫌なわけない。 こんなこと恥ずかしくて言えないけど、私だって康にこんな風に触れられるのは、恥ずかしいけど嬉しい。 「い、嫌じゃない……ただ、康のそういう強引なところ初めて見たから、ちょっとドキドキし過ぎちゃったっていうか……」 何言ってるんだか。 私の気持ちを一番に考えてくれる優しい康。 そんな康のいつもと違う強引な一面を見て、動揺しながらも、いつもよりドキドキしている自分に一番動揺している。 そんな私を見抜いたのか、康がフッと優しい笑みを零す。 「バスケやめたり、亜古をデートに誘ったり、俺のベッドに潜り込む亜古に気付かないフリしたり、健の声真似をしてキスしたり……亜古はそれ全部、俺が亜古のためにしたものだって思い込んでたみたいだけど違うよ」 「え?」 「俺はただ亜古の傍にいたかっただけ。それから亜古の目を全部俺に向けたいって思ってただけ。亜古のためと言うより、自分のため」 「康……」 「健じゃなくて俺を見ればいいって、いつも思ってた。ずっと傍にいて亜古の心の隙間に入り込んでやりたかった」 真剣な目でそう話す康が愛おしくてたまらなくて、その頬に手を伸ばした。 「だから俺は、亜古が思っているような優しい奴じゃないよ。ただ亜古が好きだから、それだけ」 指先に、大好きで愛おしい康の頬の温もりが届いて、自分の胸元から熱い感情が溢れ出てくるのを感じる。 それはもう止められないほどの感情。
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