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でもね……康。
目を塞がれて視界が奪われても、私が感じているのは、よく知った康の温もりと匂いなの。
だから、康の優しい笑顔も頭を過るんだよ。
───ドクン ドクン……。
胸が痛くて。
そして、どうしようもなく熱い。
「……私のこと、好きなら」
囁いてくれた『好き』なんて私を慰めるための嘘だって知ってる。
でも、無意識に開いた唇から言葉がもれる。
「キス、して……」
私はこの言葉を、健くんに言ったの?
康に言ったの?
わからない、わからないけど。
私は……。
私の目を塞ぐ康の手がピクッと反応したのがわかった。
でも、次の瞬間。
私の唇は温かい温もりで塞がれた。
視界を遮られたまま、私は康にキスされていた。
熱いその唇に、思考が溶かされていく。
ただ、真っ白な頭の中で、よく知った康の温もりと匂いだけを感じ取っていた。
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