部員になってください!

14/23
前へ
/283ページ
次へ
 ヤバイ。どうしよう。  どうしたらわかってもらえるんだろう。  浮かんでは消えゆく焦燥を繰り返している間に、定霜はすっかり目の前だ。獲物を捉えた捕食者のように、獰猛な笑みを浮かべ、見下ろしてくる。 「手間かけさせやがって。二度と凛詠サンを連れ回そうだなんて思わないよう、しっかりお灸を据えねえとなあ? ……歯ア食いしばれ!」 「っ!」  振り上げられた拳に、このめは本能で先を悟りギュウッと目を閉じた。 (――終わった)  ゴッ、という鈍い骨の音が鼓膜に届く。  だがその音は、このめのモノではなかった。むしろ、予想していた衝撃も――。 「あ、あれ?」  こわごわと薄目を開けてみると、このめの視界はネイビーのチェック柄に覆われていた。  それが制服の布だと認識出来たのと、このめの隣から聞き慣れない声が発せられたのは、ほぼ同時。 「ちょっと落ち付きなよ、迅」  紅咲だ。目の前の布の正体は、振り上げられた紅咲の左足だった。  このめへと向かっていた定霜の右腕をせき止め、守ってくれている。  定霜はサッと青ざめたかと思うと、急いで右腕を跳ね退けた。 「凛詠サン!? 大丈夫っスか!?」 「別にこれくらい、なんとも」
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加