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部員になってください!
「駄目だった……」
帰路や部活動に向かう生徒達の流れに逆らい、すっかりがらんどうとした教室に踏み入れたこのめは、もう何度目かもわかない結果を口にした。
室内に残っていた生徒はひとり。
学年共通の白ブレザーに、一学年を表すペールブルーのシャツ。
学年毎に指定色の異なるスラックスとネクタイはネイビーのチェック模様で、着こなしに多少の差異はあれど、このめと同じ制服を纏った青年だ。
淡いくせっ毛のこのめとは異なる絹糸のような黒髪に、これまた童顔と揶揄されるこのめとは真逆な涼やかな面持ち。
彼の名前は吹夜啓。
このめのクラスメイトであり、中学どころか年齢がゼロだった頃から付き合いのある、いわゆる幼馴染である。
スラックスのポケットに指先を引っかけ学生机に浅く腰掛けていた吹夜は、スマホから視線を上げて呆れた視線をこのめに投げた。
「もう何回目だよ」
「ええーっと……八回目?」
「いい加減、怒られねーか?」
「……そう思うなら、啓も一緒に来てよ」
手伝ってくれれば成功率が上がるかもなのに、とこのめが唇を尖らせると、吹夜は「忘れたのか?」と軽く肩を竦め、
「勧誘は協力しなくていいって約束だろ?」
「……そうですね」
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