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(俺も卒業までに、せめてあと十センチは……! って、今は背よりも、部員だよなあ)
すっかり定位置化している、何の気負いもない隣を並び歩き、このめは呟く。
「いや、だってさ。"沙羅"にピッタリなんだって。やっぱりあの人しか、考えられないよ」
隣クラスに紅咲凛詠という男子生徒がいる。
このめはなんとしても部員の一人として、彼を口説き落としたいのだ。
薄桃色の髪に、桜を思わせる大きく甘い瞳。
小柄な体型も相まって独特の雰囲気を纏う彼は、確実に一学年の『姫』の座につくだろうと囁かれている。
『姫』というのは、文化祭にて開催される、所謂『ミス・ミスターコンテスト』の『ミス』の代わりにあたる称号のことだ。
『ミスター』にあたる称号としては、『騎士』が存在している。
選ばれるのは、どちらも男子生徒。
なぜならこのめと吹夜の通う私立琉架高校は、女生徒の存在しない男子校だからだ。
人気投票により各学年一名ずつ選出されるのだが、『姫』の座を得た者は王冠を模したネクタイピンを、『騎士』の座を得た者は剣を模したネクタイピンを与えられ、全生徒からの羨望を受ける事になる。
ちなみに、このめの隣で信号待ちをしているこの幼馴染は、一学年『騎士』の最有力候補だと噂されている。
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