6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまー……」
帰宅したこのめが気落ちしながらリビングの扉をひらくと、ソファーからのんびりとした声が飛んできた。
「あ、おかえり。白ブレザー高校生」
三つ上の姉である、冬香だ。
柔らかな部屋着でのんびりと寝そべり、茶化すような笑みを浮かべている。
なんでも制服としては物珍しい白ブレザーが余程お気に召したようで、このめの入学が決まった時から、こうして度々からかってくるのだ。
「姉ちゃん、その呼び方止めてって……」
「いいじゃない、なんかの恋愛シミュレーションゲームみたいで」
「それ、褒めてないから……」
「ああ、そうそう。あんたの部屋にあった『あやばみ』のDVD、借りてるわよ」
「え!?」
言われてテレビを覗き込むと、画面上にはこのめが何度も繰り返し観た舞台の映像が流れている。
「俺も観る!」
叫んだこのめは慌てて二階の自室へと駆け込んだ。
勉強机に置いていたホチキス留めの冊子を掴むと、バタバタを足音を立ててリビングに駆け戻り、ソファーの下に座り込む。
最初のコメントを投稿しよう!