部員になってください!

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「ただいまー……」  帰宅したこのめが気落ちしながらリビングの扉をひらくと、ソファーからのんびりとした声が飛んできた。 「あ、おかえり。白ブレザー高校生」  三つ上の姉である、冬香(ふゆか)だ。  柔らかな部屋着でのんびりと寝そべり、茶化すような笑みを浮かべている。  なんでも制服としては物珍しい白ブレザーが余程お気に召したようで、このめの入学が決まった時から、こうして度々からかってくるのだ。 「姉ちゃん、その呼び方止めてって……」 「いいじゃない、なんかの恋愛シミュレーションゲームみたいで」 「それ、褒めてないから……」 「ああ、そうそう。あんたの部屋にあった『あやばみ』のDVD、借りてるわよ」 「え!?」  言われてテレビを覗き込むと、画面上にはこのめが何度も繰り返し観た舞台の映像が流れている。 「俺も観る!」  叫んだこのめは慌てて二階の自室へと駆け込んだ。  勉強机に置いていたホチキス留めの冊子を掴むと、バタバタを足音を立ててリビングに駆け戻り、ソファーの下に座り込む。
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