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──────
「アアア──っ…」
漆黒の夜を紅い爪で引き裂く悲鳴…
いや…悦びの嬌声──
グレイはうっとりと濡れた眼差しを向ける婦人から牙を抜くと紅く染まる唇を拭った。
うつろう瞳でグレイを見つめる…
その婦人に向けてグレイも笑みを返していた。
邸の隅々から響く殺戮の現場にも似た叫び。
その嬌声に混じり微かに少女のすすり泣きがグレイの耳に届く…
グレイは顔を上げて小さくほくそ笑む。
くたりとなり、眠りについた婦人をその場に寝かせると、グレイは晩餐の開かれている部屋を後にした。
◇◇◇
「…っ……ひっ…っ…くっ…」
嗚咽を堪えた声がどうしても漏れる。
ベッドに横になり、仰向けになった顔を交差した両腕で覆い隠し、ルナは止めようのない涙を溢れさせていた…
「何を泣いてる」
「……!」
扉の開いた気配なく急に掛けられた低い声にルナは強く肩をビクつかせた。
「………っほっといてっ! 家に帰りたいだけよっ…」
「…クッ……身より無しのお前の帰る所などありもしない…」
「……っ…」
グレイは冷たく言い放つとルナの腕を乱暴に掴む。
「顔を向けてみろ」
「…嫌っ…」
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