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「遅いお付きで」
「ええ、グレイ。久しぶりに貴方に逢えると思ったらお洒落に気合いが入り過ぎてしまったわ」
晩餐の時間に遅れて着いた馬車から一人の婦人が飾り立てた姿で降りてきた。
グレイはその婦人に会釈をすると、手を取り軽く口付ける。
「もう皆さん始めていますよ…貴方も早く追いつかなくては…」
エスコートする仕草で腕を出してフッと笑うグレイに、婦人も艶のある笑みを返し腕を絡ませると二人は意味深に見つめ合い邸の中へと足を運んだ。
吹き抜けの広い玄関の天井から吊された豪華なシャンデリア。
それは毎日丁寧に磨かれているかのように輝きを放つ。
ルナは明かりの漏れてくる二階へと降りてそのシャンデリアに目を止めていた。
…これもグレイの魔力なのかしら…
こうこうと明かりを注ぎホール全体を照らし付ける。
擦りきれていた真紅の絨毯も割れていた階段の手すりも今は新品、新築同様。
魔物の棲みかとは思えぬ程に邸自体がイキイキしているようだった。
…これなら確かに晩餐会なんて洒落たことも出来るわよね
そんなことを思いながら、ルナは美しく着飾った女と一緒に玄関から入ってきたグレイにはっと気付き身を伏せた。
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