4章 肉欲の晩餐

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・ 楽しそうに笑うグレイの作り笑顔。 レディーファーストで婦人をエスコートする姿、立ち居振る舞いはやっぱり一流の紳士だ。 …なによあんな顔してっ いつも威圧的な態度でしか自分に接しないグレイに対して何故かルナは唇を噛む。 フィアンセだと言っておきながらの毎日の横暴な振る舞い。 …私にはっ…一度もあんなにしたことないくせにっ 女性としてグレイに大事に扱われている婦人を見て胸がキリキリと痛んだ。 「では、こちらへ」 二階に続く階段に向って歩いてきた二人に見つからぬようにルナは近くの部屋へ隠れて様子を伺う。 婦人のくびれた腰に回されたグレイの腕。 覗き込みながらご機嫌を取る表情。 ルナが一度たりとも経験したことのないグレイの仮の優しさ… 見れば見るほど不公平にしか思えない。 楽しくお喋りをしながらルナの隠れている部屋を通り過ぎていく大人の二人。 少しだけ滲んだ涙を拭いて、その目をもう一度二人の背中に向けるとゆっくりとグレイが後ろを振り返った。 ──!… 目を赤く濡らしたルナを見てグレイはクスリと口端に笑みを浮かべる。
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