壽寫眞館

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「ご来店ありがとうございます。寿写真館店主の尼子です。」 たおやかなしぐさで手渡した名刺には、尼子八百子(あまこやおこ)と書かれている。 「お写真のご依頼でしょうか?」 客が名刺から目を上げたタイミングでやわらかく尋ねてくる。 「あ、そうです。結婚の記念になるものを、と…、そ、そのぅ…」 「ふふ。こんな白髪頭でしわくちゃの年寄りが何を今さらとおかしく思われるかもしれませんけれどね。」 うまく説明のできない夫の口を妻が引き取った。微笑むとなきぼくろが目元を可愛らしく飾る。 年老いてもチャーミングな女性はいるものだ。
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