壽寫眞館

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店主が女性ということもあってか、老女の口が軽やかになる。 「私たちは若い頃に愛しあっていましたが、事情があって一緒になれなかったんです。別々の人生を歩んできましたが、もう、しがらみのなくなった今、やっと結婚しようと。でもお金もありませんし、せめて写真の中だけでも挙式をと思いましてね。」 「まぁ!それはおめでとうございます。是非にでも素晴らしい写真を撮らせていただきますね。」 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」 緊張していたのか、ずっと固い表情だった男性にも、ようやく安堵の笑みが広がった。 「ご衣装は如何なさいますか。和装も洋装も用意があります。」 見せていただきましょうと老いた新郎新婦は八百子の後に続く。
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