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「子供じゃない! 逆の立場じゃ、やりたい放題なのに!」
泣きたい気持ちと怒りたい気持ちがごちゃごちゃになって叶多は不満をぶつけた。
その気持ちが叶多の臆病さと恥ずかしさを消した。
戒斗も過信していたのかもしれない。
気づいたときは叶多の手のすぐ傍にあった戒斗のそれをつかんでしまっていた。
が、不満任せの勇気はすぐにしぼんで、叶多はその感触に固まった。
「叶多!」
戒斗は呻くように叶多の名を低く叫んだあと、つらそうな表情を見せ、次の瞬間にはそれを振り払うように叶多を睨みつけた。
「叶多、いま、すぐ、離せ」
叶多は赤くなったり蒼くなったりと混乱して、戒斗の脅迫にも無言で首を振った。
両手のなかで戒斗がぴくぴくしている。
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