302人が本棚に入れています
本棚に追加
危なっかしいその手つきを戦々恐々として見守った。
気をつけろ、と戒斗は何度も声に出しそうになるが、それこそケガを誘発しかねない。
「……戒斗、フタ、取れたよ!」
小さく唸りながら集中していた手を止め、そのフタをかざして叶多は満足げな様子だ。
「そこまででもういいだろ?」
「だめ! 目鼻口を作らないとジャックに失礼だし!」
訳のわからないことを言い訳にして、叶多はまたカボチャと格闘を始めた。
午後になって、ハロウィンだ! と気づいた叶多は何を思ったのか、スーパーに行きたい、と言いだして付き合った結果、〝丸ごとカボチャ〟を探し当てるまで二時間も八百屋巡りをする破目になった。
家に帰るなり、叶多はダイニングの床に新聞を広げ、カボチャにマジックで絵を描き、いまはその絵のとおりに先の尖った小型のナイフでカボチャを切り刻むという作業に至っている。
最初のコメントを投稿しよう!