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何度同じ朝を迎えただろう。
「おはよう。」
まだ目を閉じたままの君に声をかける。
穏やかな息をつく寝顔は、幸せそうだ。
「朝日が綺麗だよ。」
窓の外、カーテン越しに差し込む光を指しながら、君の頭を優しく撫でる。
ゆっくりと瞼が開き、光よりも澄んだ瞳がこちらを向いた。ゆっくり、ゆっくり、窓に顔を向ける君。
「本当、綺麗だね。」
「ああ、綺麗だね。」
ほんの一言、鸚鵡返しのように呟く2人。
後に残るのは、眩しい光と、穏やかな沈黙。
「綺麗だね。」
君はそう言うと、またゆっくり目を閉じた。
「じゃあ、おやすみ。」
最後の一言が、光の中に溶けていった。
ああ、君はまた、そうやって、
「……逝ってしまうんだね。」
穏やかな顔をして眠る君。
優しい笑顔で横たわる君。
君はいつも、おやすみと呟いて溶けていく。
綺麗な朝焼けの空、光が滲んでいる。
「迎えた朝に、おやすみと告げて。
君はまた、……。」
(Fin.)
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