極上のメニュー

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 言った直後、岡山はその場で土下座した。 「お願いします……あなたの力を貸してください。西原に勝つためには、あなたの協力が必要なんです」  いきなりの土下座に、横にいる栗村は唖然となっていた。しかし、範田は冷ややかな目で見下ろしながら口を開く。 「あんたらの極上のメニュー、見させてもらった。正直に言えば、大したものだと思う。日本でも、トップクラスのものを揃えているだろう」  言いながら、範田はしゃがみこんだ。土下座している岡山の顎を掴み、顔を上げさせる。 「しかしだ、あの西原に勝つことは出来ない。お前らの揃えられる食材や器材、呼べる料理人……それでは、西原の足元にも及ばないだろう。西原の舌は、数世代に渡り磨き抜かれてきたものだ。その味覚は、まさに神の域にまで達している。さらに、奴の料理に関する知識も数世代に渡って積み重ねてきたものだ。お前らとは、完全に違う人間なんだよ。気の毒だが、お前らでは絶対に勝てない。西原とお前らとの間には、越えられない壁がある」 「その壁を越える方法をお聞きしたくて、俺はここに来たんです……」  低い声で言いながら、岡山は範田を睨んだ。  すると、範田はニヤリと笑う。 「お前に、地獄を見る覚悟があるか?」 「地獄……ですか?」  予想外の言葉に、困惑したような表情を浮かべる岡山。たが、範田はなおも繰り返した。 「地獄を見る覚悟が無きゃ、あいつには勝てない。地獄を見る覚悟があるか? 無いなら帰れ」  その言葉に対し、岡山の表情が変わった。睨むように範田を見つめ、大きく頷く。 「わかりました。あいつに勝てるなら、地獄でも何処でも行きましょう」  すると、範田はニヤリと笑う。 「いい面構えだな。わかった……力を貸してやる。ただし、後悔することになっても知らんぞ」  押し殺したような不気味な声で言葉を返した後、範田は呆然としている栗村の方を向いた。 「君にも協力してもらう」  そして数日後、極上のメニューと至極のメニューとの対決の日を迎えた。  会場には、既に多くのマスコミが集まっている。そんな中、審査員として選ばれた一流シェフや料理研究家や文化人たちが入場してきた。  さらに、ゲストとして呼ばれたタレントや女優たちも入場した。きらびやかな衣装で、微笑みながら席に着く。
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