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昼休み、いつものメンバーが俺の机の周りに集まった。
購買でパンを買ってきたり、弁当持参だったり、通学前にコンビニに調達済みだったりと、各々バラバラだ。
俺は購買で買ってきた総菜パンとから揚げを頬張っている。
その横で、同じく購買で購入してきたドンブリを旨そうに掻きこんでいるのが、太刀洗研(タチアライケン)だ。黒色の短髪、筋肉質な体型のスポーツ男子だ。俺は親しみを込めて「ケン」と呼んでいる。
「うめえ、うめええ」
「黙って食えないのかよ」
「だって美味いんだもの」
「喋ってると、喉に詰まらせるぞ」
そんな高校生とは思えない食い意地を見せる研を見て、微笑む女の子が一人。
「急がなくても、ご飯は逃げないと思いますよ」
「もごごごご」
「何を言ってるのかさっぱりだよ。ほい、お茶」
俺がさし出したお茶を受け取るケンを見て、羽澄はまた笑みを零す。
羽澄幸子。黒髪のショートカットにこれまた黒縁の眼鏡をかけている。目立つタイプではないけれど、可愛い女の子だ。
「ケンくん、口の端にお米がついていますよ」
彼女が自分の小さな唇の端をさして言う。
「もご」
研はそれを手の甲で拭うと、食べた。
「まだ飲みこんでなかったの?」
俺が呆れをありありと滲ませると、研はただ一言呟いた。
「……うめえ」
「さっきからそればっかだな。なあ彩芽」
「運動部だから仕方ないんじゃない? ねえ光太くん」
是枝はぞんざいな返事を寄越すと、すぐに光太に向き直ってしまった。
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