炎の花

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母と杏奈の相性が良くないと判断して 実家に連れて行かなかったのは正解だった が、悠汰を見れば志津子の不満も少しは 和らぐだろうと考えたのは誤算だった。 洸一の子に亡き父・悠貴の一字を使うのは 志津子の希望だった。それなのに勝手に 命名したとケチをつけ、画数が悪いと一蹴 した。志津子は悠汰に一瞥もくれてない。 実子である洸一でも鼻白む思いなのだ。 塩を撒かれたぐらいで済んだのは幸い だった。 洸一がドアを開けると杏奈が悠汰を寝かし つける声が聞こえてきた。玄関に一歩足を 踏み入れるとジャリッと音がした。塩だ。 その音で杏奈は洸一に気がついた。
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