炎の花

9/32
前へ
/32ページ
次へ
「洸一っ、帰りますよ。車を出して ちょうだい。」 洸一は車のキーを持って立ち上がった。 志津子が玄関を出て行くと塩が飛んで きた。杏奈が撒いたのだった。 もともと志津子には洸一の結婚式が自分の 希望するような形式ではなかったことと、 結婚前に杏奈が妊娠したことで不満が くすぶっていた。それが杏奈への辛辣な 物言いとなったのだが、却って杏奈の 「やる気」に火をつけてしまったらしい。 何故なら杏奈の瞳が怒りによって俄然 輝き始めたからだ。彼女は頑なに自分の 主張を貫く人間ではないが、理不尽な 扱いに黙って耐える人間でもない。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加