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「洸一っ、帰りますよ。車を出して
ちょうだい。」
洸一は車のキーを持って立ち上がった。
志津子が玄関を出て行くと塩が飛んで
きた。杏奈が撒いたのだった。
もともと志津子には洸一の結婚式が自分の
希望するような形式ではなかったことと、
結婚前に杏奈が妊娠したことで不満が
くすぶっていた。それが杏奈への辛辣な
物言いとなったのだが、却って杏奈の
「やる気」に火をつけてしまったらしい。
何故なら杏奈の瞳が怒りによって俄然
輝き始めたからだ。彼女は頑なに自分の
主張を貫く人間ではないが、理不尽な
扱いに黙って耐える人間でもない。
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