ホ・ラ

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 彼女は美しかった。顔の造形が、とか化粧が、などは私にはわからない。ただ、彼女には目をひく『憂い』があった。笑っている時も、歌っている時も、常に落ちる影があった。それが『自分と同じもの』だとはさすがに予想していなかったが、今にして思えば、あれは必然的な感情だったのかもしれない。 「私は、作家なんです。小説を書いているんですよ」 「まあ、すてき」  職業を明かすと、彼女は無邪気に羨ましがった。 「私、本を読むのが好きなんです。自分でも書いてみようとしたことがあったんですけれど。でも、だめでした。才能が足りないみたいで」 「と言っても私なんて、大して名も売れていない、ぱっとしない奴なんですけどね」 「それでも、すごいです。ペンネーム教えてください。探してきて、読んでみます。そうだ。今度お会いした時に、サインくださいね」  頬に毛をたらし、私の言葉を一心不乱にメモする彼女はとてもかわいらしかった。 「けれど、物を書くお仕事だったら、右手に穴があるのは不便ですね」
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