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僕はアルバムを閉じ、待合室から聞こえる振り子の音にうながされながら、自分の去就のことを考えた。
立飛組という得体のしれない組織の百人目として針を持ち、措置法を死立てていくとなると、死立てられる以上の覚悟がいる。
エリスを初めとした九十九人の瞳の光は、その決意を手帳に焼きつけるための刻印だったにちがいない。
彼女がきのう話した内容は、どこまでが立飛の物語で、どこからが彼女自身のことだったのだろうか。
僕が冒険を断ったときのエリスの落胆が目に浮かんだ。
母が結婚前、武術か何かに傾倒し、少女を弟子に取っていたと、父から聞いたことがある。
その父も母のあとを追い、僕に二重の責め苦を残して死んだ。
彼女は恩師の面影のほかに、どんな興味を僕に抱いたのだろうか。
父の死を他殺に偽装しようとした僕に、自分と同じ匂いを感じたのだろうか。
彼女が死立てられに来ることになったのは、僕の母のせいなのだろうか。
彼女はなぜマウンテンバイクに乗るのだろうか。
彼女が恋をしたら、痛めつけることから手を引くのだろうか。
彼女は自分の選択をベストなものだと確信して写真を残したのだろうか。
彼女は最後の晩餐で何を口にしたのだろうか。
彼女はどんな音楽を好むのだろうか。
彼女は僕の何なのだろうか。
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