一方通行

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 今もさっきも進入禁止の道路だが、道幅は、対向車が来ても充分な広さだ。進んでもまず事故は起こらない。  もしもパトカーや白バイが近くにいたら? その時は交通違反になってしまうだろ。でも、そうなったとしてそちらへ進むべきだと、 俺の直感が告げていた。  交通ルールを無視している状態なので、慎重に辺りを見回しながら、徐行の速度で一方通行の道路に入り込む。  幸いにも対向車は来ない。だから次の四つ辻で、今度は走ってもい道路に出よう。  そう思い、進んでいたら、ふいに全身に何とも言えない衝撃が走った。  急に水の中に入り込んだような、全身に圧力がかかる感触。  それに驚き、ブレーキを踏むと、すぐに衝撃は収まった。  今のは何だったのだろうかと、首を傾げるが答えは得られず、俺は運転を再開した。  程なく四つ辻に辿り着き、侵入可能な道路を探す。そこで俺は目を見張った。  さっきまであれ程、一方通行と進入禁止の標識が掲げられまくっていたのに、この辻には何一つそれがないのだ。  ナビを見ると、目的地にかなり差し迫っている。だから最短のルートを選んで走ったら、そこから一方通行も進入禁止もなく、驚くほどスムーズに目的地へと辿り着けた。  ただ、迷いまくったせいでかなり予定の時間を過ぎてしまったと思っていたのに、到着したのは、当初の予定通りの時間だったことがさらなる驚きだった。  その後、仕事を終えた俺は来た時同様車で帰路に着いたのだが、周辺には、一つの一方通行標識も進入禁止標識もなかった。  …今日、俺はいったいどこを走っていたのだろう。  一方通行と進入禁止だらけの道。ルール違反をせずにあのまま標識に従っていたら、いまだに俺は、どことも知れぬ謎の一帯を走り続けていたのかもしれない。 一方通行…完
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