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夜の風が多紀の髪をさらりと流す。
「……仙台に帰っていたんだ。
七回忌があって」
七回忌、
と青羽の唇が声を出さずに動いた。
「指輪の相手だった、
ひとの」
「……奥さんの?」
多紀の瞳が揺れて、
視線が僅かに外される。
「――結婚、
していたわけじゃないんだ」
その言葉に黒い瞳が見張られた。
「……だって……あの写真……指輪だって」
少しの沈黙の後、
青羽が戸惑った声を出した。
「……ここじゃ、
話しにくいな」
青羽から外した視線をそのまま周囲に巡らせて、
多紀が言う。
駐車場を出入りする車のエンジン音に時折かき消される声。
行過ぎる人たちが、
立ち止まったままの二人にちらりと不審そうな眼差しを投げてくる。
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