第1章

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「ウチに来るか」 「え、 でも」 さらりと言われた誘いに、 いいんですか、 と青羽が怯んだ顔を見せた。 何がと聞き返した多紀に 、 言いにくそうに口を開く。 「だって……俺、 多紀さんに酷い事したのに――家に入れたら、 また同じ事されるかもって…… 思わないの?」 つっかえつっかえの言葉に、 多紀の口元がふっと緩んだ。 「……俺は黒帯だ……本当に嫌だったら、 投げ飛ばしてる」 青羽が視線を上げた。 「ひとつだけ……聞いていいか?」 戸惑う黒い瞳が多紀を見返す。 「あのあと……去り際に君が言った言葉を、 覚えているか」 半ば眠りに引き込まれながら、 それでも確かに聞いたと思う。 何度も繰り返された、 言葉を。
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