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午後の日差しの中。
多紀が青羽の勤める書店の前に立ったのは、
最後に会ってから2週間が過ぎようという頃。
駐車場を出るまでは普段通りだった足取りが、
入り口に近づくにつれて重くなる。
青羽とはきちんと話さなくてはいけないと思う一方、
やはり顔を会わせにくいのは正直な気持ちで。
……このまま会わずにおくという選択肢もあった。
遠からず彼はまた国外へ出るだろうから、
二度と会わないでいることだって出来るだろうけれども。
唇をきゅ、
と噛むと。
多紀は店の自動ドアを潜った。
「いらっしゃいませ」
店員の声に迎えられてカウンターに視線を投げれば、
そこに青羽の姿はない。
遅番かあるいは休みだったのだろうか。
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