第1章

2/12
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
午後の日差しの中。 多紀が青羽の勤める書店の前に立ったのは、 最後に会ってから2週間が過ぎようという頃。 駐車場を出るまでは普段通りだった足取りが、 入り口に近づくにつれて重くなる。 青羽とはきちんと話さなくてはいけないと思う一方、 やはり顔を会わせにくいのは正直な気持ちで。 ……このまま会わずにおくという選択肢もあった。 遠からず彼はまた国外へ出るだろうから、 二度と会わないでいることだって出来るだろうけれども。 唇をきゅ、 と噛むと。 多紀は店の自動ドアを潜った。 「いらっしゃいませ」 店員の声に迎えられてカウンターに視線を投げれば、 そこに青羽の姿はない。 遅番かあるいは休みだったのだろうか。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!