7人が本棚に入れています
本棚に追加
……嫌われるのが怖いなんて。
そんな風に感じた相手は、
初めてだった。
――後先の事も考えられずに、
ただ欲してしまった相手も。
恋愛なんてただの駆け引き。
バランスゲームを楽しんで、
ひととき快楽を共有するだけでいいと思っていたのに。
「……なんで」
知らず零れた独り言。
……なんで、
あの人なんだ。
よりによって既婚者で、
それ以前に同性で。
およそ恋愛の対象にはなりえない人なのに――なぜ。
ずきりと身体のどこかが痛んで、
息苦しさに青羽が胸を掴む。
「青羽くん、
どこか具合でも悪いの?」
何だか顔色も悪いみたいと、
同僚に覗き込まれて問われれば、
何でもないと首を振るしかなかったけれど。
最初のコメントを投稿しよう!