第1章

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……嫌われるのが怖いなんて。 そんな風に感じた相手は、 初めてだった。 ――後先の事も考えられずに、 ただ欲してしまった相手も。 恋愛なんてただの駆け引き。 バランスゲームを楽しんで、 ひととき快楽を共有するだけでいいと思っていたのに。 「……なんで」 知らず零れた独り言。 ……なんで、 あの人なんだ。 よりによって既婚者で、 それ以前に同性で。 およそ恋愛の対象にはなりえない人なのに――なぜ。 ずきりと身体のどこかが痛んで、 息苦しさに青羽が胸を掴む。 「青羽くん、 どこか具合でも悪いの?」 何だか顔色も悪いみたいと、 同僚に覗き込まれて問われれば、 何でもないと首を振るしかなかったけれど。
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