第1章

7/12
前へ
/31ページ
次へ
なんでかなんて、 分からない。 頭では、 理屈では何ひとつ分からない。 押えた胸がまた、 つきりと疼いた。 ――ここが知ってると、 教えるかのように。 のろのろと過ぎていた時間は、 退社時間が近づくにつれてだんだんと早くなった。 「何だよ、 デート?」 壁にかかった時計を無意識のうちに気にしてしまう青羽に、 別の同僚がからかうような声をかけ てくる。 「違うよ……あ、 俺やる」 同僚が手に取った返本のチェックリストを、 青羽が受け取った。 面倒だからいつもはうまく逃げている書類作業も、 今日だけはありがたい。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加