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なんでかなんて、
分からない。
頭では、
理屈では何ひとつ分からない。
押えた胸がまた、
つきりと疼いた。
――ここが知ってると、
教えるかのように。
のろのろと過ぎていた時間は、
退社時間が近づくにつれてだんだんと早くなった。
「何だよ、
デート?」
壁にかかった時計を無意識のうちに気にしてしまう青羽に、
別の同僚がからかうような声をかけ てくる。
「違うよ……あ、
俺やる」
同僚が手に取った返本のチェックリストを、
青羽が受け取った。
面倒だからいつもはうまく逃げている書類作業も、
今日だけはありがたい。
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