第1章

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リストを片手に在庫のある部屋とカウンターを行き 来していれば、 気が紛れるように思えた。 「お疲れ。 もう上がれよ」 ぽんと肩を叩かれて、 思いのほか仕事に集中していたと気づく。 振り仰げば時計の針は10時を少し回っている。 あっと青羽がデスクから立ち上がった。 引継ぎもそこそこに店の裏口を潜る。 駐車場に出てすぐの、 街灯の下。 止めた車の脇に立つスーツの人影を認めて、 喉がこくりと鳴った。 「――多紀さん……」 少し距離を置いたところで立ち止まると、 多紀の方から歩み寄ってきて。 その顔に浮かんだ表情が陰になって見えないのに、 青羽がなんとなくほっとした。 「……青羽く」 「あの、 すみません!多紀さん――俺……」 多紀に先を言わせまいと紡いだ言葉が、 尻すぼまりになる。 謝って済む事じゃないけど、 と小さな声が続けられた。
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