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リストを片手に在庫のある部屋とカウンターを行き 来していれば、
気が紛れるように思えた。
「お疲れ。
もう上がれよ」
ぽんと肩を叩かれて、
思いのほか仕事に集中していたと気づく。
振り仰げば時計の針は10時を少し回っている。
あっと青羽がデスクから立ち上がった。
引継ぎもそこそこに店の裏口を潜る。
駐車場に出てすぐの、
街灯の下。
止めた車の脇に立つスーツの人影を認めて、
喉がこくりと鳴った。
「――多紀さん……」
少し距離を置いたところで立ち止まると、
多紀の方から歩み寄ってきて。
その顔に浮かんだ表情が陰になって見えないのに、
青羽がなんとなくほっとした。
「……青羽く」
「あの、
すみません!多紀さん――俺……」
多紀に先を言わせまいと紡いだ言葉が、
尻すぼまりになる。
謝って済む事じゃないけど、
と小さな声が続けられた。
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