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子供の手にも収まるほどの赤紫色をした小さな果実があった。その果実を人類で初めて食べた若者は、「世の中にこんな美味しいものが存在したのか」と感動し、果実に『ダキヤ』と名付け、周りの人々にダキヤの素晴らしさを広めてまわった。
ある日、噂に広まるダキヤの果実を口にした別の若者が、「どんなものかと期待して食べてみれば、なんて事はないただの果実ではないか」と、噂以下の味に拍子抜けした。
そんな若者の言葉をたまたま近くで聞いた、ダキヤを至高の果実と信じている人物が若者に文句を言った。
「やいやい、ダキヤをただの果実だって!? ふざけるな!! こんなに美味しい果実の素晴らしさをわからないなんて、お前の舌はどうかしてるんじゃないか!?」
文句を言われた若者も黙っていない。
「どうかしてるのはお前だ!! こんな果実を有り難がりやがって!!」
「なんだと!!」
「やるか!!」
とうとう二人は取っ組みあいの喧嘩を始めた。ダキヤに関するいざこざは何も彼らに限らず、世界のあちこちで見られ、やがてはダキヤ至高派対ただの果実派での戦争にまで発展した。
ダキヤが魅惑の果実か否か、いずれにせよ食べる事のない我々には関係のない話…。
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