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「痛てえなお前!!」
野良ビーグル犬のキィオは、人集りで賑わう通りでうっかり通りすがりの飼い犬のミニチュアダックスの脚を踏みつけてしまった。
「ご・・・ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
キィオは、因縁をつけてきた通りすがりのミニチュアダックスに、何度も土下座いて謝った。
「ちゃんと見て歩け!!どこ目ん玉つけてんだ!!」
「き・・・気を付けます・・・す、すいません!!」
キィオは、踏みつけたミニチュアダックスの脚をペロペロと舐めた。
「触るな!!気持ち悪いなあ!!狂犬病が感染るだろ?!
お前なあ・・・リードは?首輪も無いなら『野良犬』か?!御免で済んだら、保健所は要らねえんだよ!!」
「プリンちゃん!行きましょ!!」
ミニチュアダックスの飼主の女性が声をかけると、ダックスは「どけ!!」と言わんばかりに呆然とするキィオをはね除け、飼主と共に去っていった。
「・・・」
キィオはミニチュアダックスのその言葉に、今までこの『現実』から逃げてきた、その言い逃れ出来ない事実を直面した。
・・・自分・・・『野良犬』だ・・・
てくてくてくてく・・・
目の前に、今さっき踏みつけたダックスと同じような、飼い犬のミニチュアダックスが歩いているのを見かけた。
「ねえ、自分は『野良犬』に見える?ねえ?ねえ?ねえ?ねえ?」
ミニチュアダックスは、キィオのしつこさを気味悪がって、リードを引っ張ってそそくさと逃げてしたった。
「ねえ、自分は『野良犬』?」
「ねえ、自分は『野良犬』に見える?」
「ねえ、自分は、」
「ねえ、」「ねえ、」「ねえ、」「ねえ、」
キィオは気でも狂ったように、通りすがりの飼い犬に徹底的に声をかけるも、
誰もシカトして、そそくさと飼い犬に付いていって去っていった。
「ねえ、」「ねえ、」「ねえ、」「ねえ、」
「うるせえよ!!邪魔なんだよ!!」
どんっ!!
図体の大きい飼い犬のレトリバーに、蹴り飛ばされたビーグルのキィオは、揉んどりうって道の側面にあるゴミ箱に激突し、その拍子に倒れてきたゴミ箱からゴミが無様なキィオに覆い被さるようにぶちまけた。
・・・・・・
キィオの目から、悔しさ涙が滲んできた。
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