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もはや無意味でしかない説法を聞き、憂鬱になりながらリュックサックを背負い店を出ることにした。
信じられない話なら良かった。
しかしこの老婆がなぜ私というものを知っているのか。
その力を理解したら、私よりも私の未来を知っている老婆からそのように言われたのだ。もはやどうしようもなかった。
もはや涙さえも出ぬ。
それでも情報を教えてくれたのだ。財布を臀部に付いてあるポケットから出すと、老婆は手を突きだして首を横に振った。
「代金やそれに代わるものはいらぬ。お前の未来を思うと何か物を貰う気さえも出ぬし、お前にとって有益な情報をやったわけではないからな」
何か申し訳なさそうにしている老婆からそう言われて、私は何の感情も沸いてこず、黙って元のポケットに財布をしまった。
ショックで足元が覚束ない中、それでも入り口の扉のドアノブに手が掛かった時、老婆が一言最後に告げた。
「一応サービスとしてじゃ、お前が元いた会社は2年後の〇月〇〇日に不況によって倒産するからの、ではありがとうございました」
私は黙って店を出た。
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